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2017/10
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お題:クリスマスツリー
「欲しがり屋さんは卒業しましたので」

アクリルケースに行儀よく収まったクリスマスツリーを見ながら彼女が言った。
暖色の間接照明のみで薄暗い寝室に置かれた、彼女が見とれているミニチュアの
ツリーは、飾れた赤と金のクーゲルを遠慮がちに輝かせていた。

「そのツリー、気に入ってくれるのは嬉しいけどさ。去年の思い出だよ」

ベッドで横になっている彼女のすぐ後ろの縁に腰を下ろす。
自分好みに伸ばされた長い黒髪を掬うと、防衛本能が働いたのか僅かに身を縮めた。
悪いことなんてまったくするつもりないんだけどな、と思いながら髪の毛を弄ぶ。
心なしか、いつにも増して黒髪の手触りが良いように感じた。

「私ってみんなが思っている以上に欲張りみたいで。だから、いい子じゃないんだ」

欲張りと聞いて思い出したのは、彼女と出会った去年のクリスマスイブだった。
三年間も付き合っていたかつての恋人を浮気相手に取られ、公園のベンチで
雪をかぶりながら缶チューハイを呷っていると、声をかけてきたのが彼女だった。
私も隣いいですか、と聞いてくると返事を待たずしてベンチに腰掛けてきた。
そして俺と似たように上を向いて、叫びたい感情と一緒に缶チューハイを一息で飲み干した。
誰も信用したくない、けれども誰かが隣に居て欲しい。
そんな都合のいい寂しさを彼女も抱えていたように見えた。

「もう去年との俺たちじゃないんだし。新しいのが欲しいでしょ」

ベッドに倒れて背中側から腕をまわすと、彼女は振り向いて「大きいのは欲張りだから」と答えた。
「いらない」と言われなかったことにひとまず安堵して、ベッドの下に隠していた鞄を取り出した。
彼女を起こして正面に座らせて、赤地に白い星が散った包装をされた箱を手渡す。
緊張気味に受け取って固まる彼女に「開けてみて」と促すと、小さく頷いて包装を剥がした。
彼女が既に持っている物と全く同じ型のツリーは、アクリルケースの中でクーゲルの輝きに混じって自慢げに白い指輪を下げていた。
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