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2018/06
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幼馴染「男って好きな人とかいる?」 男「とか?」
男「『とか』とはなんだ」

幼馴染「とか……とかは、その……」

男「『とか』ということは好きな人以外を答えてもいいんだな」

幼馴染「好きな人以外だと困るけど……う、うーん」

男「梅雨時期に売られているブロッコリーは柔らかそうな気がする」

幼馴染「梅雨? ブロ、え?」

男「湿気にやられてふやけていそうだ。どうだ」

幼馴染「いくら梅雨時期でも湿気でふやけることは……」

男「そうか」

幼馴染「……」

男「……」

幼馴染「…………」

男「…………」

幼馴染「………………」

男「………………」

幼馴染「キシャー!!」

男「うおっ。いきなり牙を剥いてどうした」

幼馴染「嘘でしょ?!」

男「なにが嘘だ。幼馴染が自由回答でもいいと言ったから答えただけであって」

幼馴染「いやいやいやいや! 今の私の勇気はとんでもなかったんだからね!」

男「質問をするだけなのに勇気もなにもないだろ」

幼馴染「勇気を振り絞れるだけ絞り出した純情乙女の質問に対してそれは嘘でしょ!」

男「人の口笛に似た鳴き声から、それを意味する古語から名付けられた鳥の名前は?」

幼馴染「ウソでしょ?!」

男「正解だ。1ポイントやろう」

幼馴染「今のクイズもなによ?!」

男「7ポイント貯めたらアイスを買ってやろう。ガリガリしたアイスを」

幼馴染「アイスはいらない!」

男「リッチな方をおごってやるつもりだったんだが」

幼馴染「それよりも私の質問に、ごまかさず、ちゃんと、答えて!」

男「ちゃんと言われても……」

幼馴染「グー、ガルル」

男「……梅雨時期のブロッコリーは」

幼馴染「シャー! ガオー!」

男「おおうっ」

幼馴染「分かったわよ! 質問を言い直すわよ! 恥ずかしいけど言い直す!」

男「今度は正しく伝わる聞き方で頼むぞ」

幼馴染「ああんっ?」

男「ひっ」

幼馴染「あ……わた……す、すき……お、男には、好きな人が、いますか?」

男「いるぞ」

幼馴染「えっ。そ、それは誰」

男「そんなの。お前だったり」

幼馴染「わ、私?! ほんと?」

男「友だったり、妹だったり。……そういえば誰かが嫌いってことは考えたことがなかったな」

幼馴染「……」

男「あれか。変なやつがいると、嫌うよりも先に心理分析にかけてみたい対象と出会えた喜びがくるのか、俺は」

幼馴染「ふ、ふふ」

男「ん、どうした?」

幼馴染「ふふふ……ふふ……」

男「なんで笑う。思春期を拗らせたわけじゃないぞ。観察っていうのは、純粋に探究欲の話しだぞ」

幼馴染「ふっざっけんない! ざっけんない!」

男「おうふっ。胸倉を掴まれると苦しい」

幼馴染「分かる? 見える? 私の顔は真っ赤なの。焦らさないで」

男「そうだな赤いな。なんで幼馴染が赤くなるんだ」

幼馴染「何年間ずっと一緒にいたのよ! 多少の語弊があっても伝わるもんでしょ、普通!」

男「その普通は主観的な判断だろ。客観的に見つめれば、語弊は語弊だ」

幼馴染「はぁ?」

男「簡単な例で説明しようか。俺と幼馴染がリンゴの木を挟んで立っているとしよう」

幼馴染「なんでリンゴが出てくるのよ。まったく関係ないでしょ」

男「幼馴染側からは右端にリンゴがひとつ実っているのが見えるとする」

幼馴染「それで? だから?」

男「そこで幼馴染が言う。『リンゴがあるけど分けられないね』」

幼馴染「半分に切ればいいじゃない」

男「しかし俺の側からは左寄りにふたつ実っているのが見える」

幼馴染「じゃあ分けられるでしょ」

男「だが、俺は思うわけだ。『幼馴染はふたつも食べるのか』と」

幼馴染「はああっ?!」

男「んぐっ。く、苦しい。力を弱めろ……」

幼馴染「私がそこまで意地汚い人間なわっきゃないでしょ!」

男「仮の話しだから。お、落ち着け。仮だ」

幼馴染「リンゴはみっつありました。ひとつずつ食べて1余り。それでいいでしょ」

男「違う。『みっつある』と気付けるのは第三者視点。俺たちにはひとつとふたつにしか見えていない」

幼馴染「はいはい。それが語弊ってことね。賢くなりました、ありがとうございます」

男「さて、この三者三様に違うものが見えている状態で誰が一番悪いと思う?」

幼馴染「悪いって何よ。悪いことなんてないでしょ」

男「じゃあ、間違えてるのは?」

幼馴染「間違いもないわよ。見えてるものが違うんだから仕方ないじゃない」

男「そう。それだよ」

幼馴染「なにが」

男「俺も幼馴染も見えている光景が違う。そして誰も迷惑を被っていない以上、正誤は存在しない」

幼馴染「それが自己弁護ってことでいい? 弁明のお時間は終わり?」

男「べ、弁明をしていたつもりはないぞ。だから、な? どっちも悪くないぞ、というな」

幼馴染「今の私の気持ちを教えてやろう」

男「はい」

幼馴染「飴が好きかと聞かれて首を縦に振ったらハッカ味のドロップを渡された気分よ」

男「それは……つまり……なんだ。まったく伝わらないが……」

幼馴染「語弊なんてないんでしょ? ほら、感じたままに私の気持ちを解読しなさいよ。おら」

男「……飴なら全部が好きだと思うな、か?」

幼馴染「残念でした。なんの味が無難かを渡すときに考えろ、でした」

男「顔。顔が怖いぞ。怖い顔が近いぞ」

幼馴染「いい。これからの質問は全部無難に、頭を使わずに答えなさい」

男「はい」

幼馴染「男には好きな人とかいる?」

男「その質問にはさっき答えて」

幼馴染「いる?」

男「い、います!」

幼馴染「それは誰?」

男「お、おお幼馴染さんです!」

幼馴染「そうよね。私のことが好きよね」

男「はい! 好きです、はい!」

幼馴染「ありがとう。その言葉が聞きたかったの」

男「幼馴染さんのお気持ちに沿うことができて光栄であります! はい!」

幼馴染「この怒りの感情に任せて言ってあげる。私も男のことが好きよ」

男「はい! ありがとうございます! 身に余る栄誉でございます!」

幼馴染「今日、一緒に帰るわよ。ぜーったいに逃げないでね。追わないといけなくなるから」

男「了解いたしました!」

幼馴染「そして私の部屋で勉強会ね。お母さんがいない日だからもてなせないけど、いいわね?」

男「はい! ……はい?」

幼馴染「なによ」

男「ご両親がご不在で幼馴染の部屋でふたりっきりで勉強会……」

幼馴染「はいって言ったのちゃんと聞いたからね。言質とったかんね」

男「それは……つまり……なんだ。つまりは……」

幼馴染「ご、語弊も他意もないから。……へ、変な誤解したら叩くわよ」

男「親の居ぬ間に勉強だなんて。そんなに今学期のテストがヤバ――」
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