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男「料理をしよう」女「ばっちこい」(2016)
女「すぴー……」

男「すやすや」

女「んー……んふ」ムギュ

男「んぐっ……ぐぅー」

女「んふぅ……むにゃむにゃ」

男「すーすー」モゾ

女「んぁっ」ビクッ

男「すやー」

女「……ふわぁ。……おトイレ行きたい」ムク

カチャ パタン

男「ぐーぐー」

男「んあっ。……布団、離れてる……」ギュッ

男「……すぅすぅ」

カチャ パタン

女「んー、寝る」ドサッ

男「ほわぃっ?! なになに?!」ビクッ

女「んー。大きな声ださないで」

男「おんなか! びっくりした! 本当にびっくりした!」

女「布団」グイッ

男「待って。まるでそうであるとばかりに二度寝しないで」グイッ

女「なんでぇ。だってまだ起きる時間じゃないよぉ」

男「ここはおんなの寝る場所じゃないの。俺の布団なの」

女「……何時?」

男「1時」

女「じゃあ寝る」コロン

男「だから待ってって。違うでしょ。そうじゃないでしょ」

女「追い出すの?」

男「ん?」

女「真夜中の1時に女の子を家の外に追い出すんだ」

男「え、俺が悪者?」

女「それでもし私が悪い怖い人に襲われたらどうするの?」

男「どうするのって言われても……」

女「そんなことも考えないで追い出そうとするひどい人だったんだ」

男「でも屋根を伝って入ってきたんでしょ?」

女「……」

男「……」

女「…………」

男「…………」

女「おやすみなさい」

男「待てよ。話しは終わってないぞ」

女「仕方ないじゃん! お腹空いたらポテチ食べたくなっちゃうんだもん!」

男「俺の部屋を食料庫かなにかと勘違いしてませんか?」

女「なのになんで置いてないのよ」

男「自分の分として買っているのにこの言われよう。もはや気持ちいい」

女「食べたいのに食べられなかったら、さすがの私だってふて寝するよ!」

男「まさか真面目にその論が通じるとお思いでございますか?」

女「だから私は寝ることで抗議をします! おやすみなさい!」

男「あれ? ポテチあるじゃない。いつものところに」

女「なかったもん」

男「ほら。これ」ワシャッ

女「ないです」

男「あるって。見てよ。コンソメ、海苔塩、醤油わさびと」

女「ありません」

男「あるって」

女「ないの!」

男「あります!」

女「期間限定の蜂蜜梅たまごミルク味がないの!」

男「……」

女「そういうこと。おやすみ」ゴロン

男「おんなはポテチが食べたくて俺の部屋に来てるの?」

女「……なによ」

男「それっていかがなものでしょうか。さすがにないよね」

女「怒ってる?」

男「お腹が空いたらポテチ。ポテチがあるから俺の部屋。おかしくない?」

女「それは……だって……」

男「これからもこんなことが続くなら考え直そうか」

女「考えなすってなにを?」

男「おんな。真面目な話な」

女「……うん」

男「料理をしよう」

女「ばっちこい」

男「夜間のお菓子で埋まるのは欲求だけ。小腹は空いたまま。それは覚えて」

女「うん。覚えた」

男「本当に覚えた?」

女「覚えました」

男「じゃあ言ってみて」

女「満腹中枢を刺激したいならよく噛みましょう」

男「そうだね。全く違うね。なにもかも違うね」

女「蜂蜜梅たまごミルク味のポテチよりもおいしいものが食べたいです」

男「そんなにおいしかったの?」

女「まだ食べてないから分かんない」

男「見えない敵と闘えって、それはもうシャドーボクシングと言うのだよ」

女「あー……目がしっかりと覚めたせいでお腹が空いたな……」

男「寝る前だから軽食でいいよね」

女「え?」

男「だって空いたって言っても腹の虫が鳴くほどでは」

女「鳴れ。お腹の虫、鳴れ。鳴け」ペチペチ

男「えー」

女「鳴け、鳴――」グー

男「……鳴いた」

女「……聞こえた?」ポッ

男「うん、まあ、聞こえました」

女「やー、もうやだぁ。恥ずかしいなあ……」モジモジ

男「え? 鳴かそうとしてたのに恥ずかしがるの?」

女「あのね。お腹が空いてます」

男「存じております」

女「早く台所に行きませんか?」

男「住人を急かすとは新しいね。まあいいや、行こうか」

――――――
――――
――

男「冷蔵庫は俺が見るから、外に出てる食材の確認をお願い」

女「あるのを言えばいい?」

男「うん。よろしく」

女「塩、砂糖、しょうゆ、みりんと」

男「それは食材じゃなくて調味料。缶詰や乾物にどんなのがあるかを教えてよ」

女「私も冷蔵庫の確認したいな」

男「食べるじゃん」

女「食べないよ。食べるけど」

男「食べるでしょ」

女「食べるよ。……食べないの?」

男「食べるよ?」

女「でしょ。じゃあ見せてよ」

男「うん……ん?」

女「冷凍ご飯!」

男「放置が過ぎるとぼろぼろになるよね」

女「……ぼろぼろ」

男「放置が過ぎました」

女「ごま昆布!」

男「甘しょっぱい昆布とごまの香ばしい香りが好きだよ」

女「おいしい!」

男「ほら食べた。食べちゃったじゃないか」

女「たまご!」

男「お米とごま昆布とたまごでちょっと豪華な卵がけご飯が出来上がるよね」

女「かつおぶし!」

男「さらにワンランク上の卵がけご飯を求めるあなたにおすすめ」

女「マーガリン!」

男「言わずとも知れた名脇役。卵がけご飯の甘さを引き立てる隠し味に使ってます」

女「シャケ!」

男「塩をふって焼くとご飯が足りなくなるメインディッシュ。シンプルっていいよね」

女「まな板を準備します」

男「はい」

女「シャケを寝かします」

男「はい」

女「軽く塩をふって揉み込みます」

男「はい。ここでのポイントはなんでしょうか?」

女「身を崩さないように優しく優しく揉み込んであげてください」

男「料理番組みたいな流れに便乗したものの、女がご飯作るの?」

女「……頑張る」

男「ほう。じゃあヘルプ以外では手は出さないよ」

女「レモンとオリーブオイルある?」

男「あるよ。レモンはポッカなら」

女「えーっと、野菜室に……ニンジン、ダイコン、キュウリ……合格」

男「何かに合格した。なんだかすごく簡単そうな審査を突破した」

女「シャケを焼きます。焼いて」

男「ヘルプ以外で手を貸しませんよと、ついぞさっきに」

女「ヘルプ!」

男「なんて都合のいい! グリルでお好みの火加減は?」

女「弱火。じっくり焼くのが好きだから」

男「弱火ね。はい、焼き始めました」

女「おんなのお手軽3分クッキング!」

男「今から? シャケの下ごしらえをする前から始めないとずるくない?」

女「まずは冷蔵庫からぼそぼそになったお米を出します」

男「今焼いてるシャケはどうなるの?」

女「シャケはお手軽20分クッキング」

男「ああ、違うのね。しかも20分ってまあまあの調理時間じゃない?」

女「ぼそぼそになったお米をお茶碗に移して少量の水を加えます」

男「チンするとある程度ふかふかになる小技ね」

女「2分間温めます。はい」

男「え? これにもヘルプ?」

女「ヘルプ!」

男「もうなんだろうね、これ。喜んで手足になりましょう」

女「卵と醤油とお箸の先端で僅かにつまんだマーガリンを容器に入れます」

男「そうして?」

女「混ぜます」

男「ですよね。まさか3分クッキングって卵がけごはん?」

女「はい」

男「はい。期待を裏切らないね。おんなは」

女「はい」

男「はい。……どうしたの?」

女「はい。混ぜて」

男「ああ、俺に差し出してたのね。その意味の『はい』なのね」

女「そうして混ぜ終わりましたら」

男「早い早い。まだかき混ぜるためのお箸すら握ってないです」

女「早く早く。お腹空いた」

男「焦ってもご飯が温まらないと食べられないでしょ」シャカシャカ

チンッ

女「炊けた」

男「温まっただけです。2分にしては早くない?」シャカシャカ

女「お腹が空きすぎて1分半にしました」

男「もう30秒くらい我慢しようよ」

女「混ぜた? 混ぜた?」

男「混ぜました。どうぞ」

女「鰹節! ごま昆布!」

男「ああ、やっぱり卵がけごはんになるんだね」

女「お醤油をかけます。『いの一番』をひとつまみ分ほどぱらぱらーと……」

男「美味しそうだね」

女「チチチッ。美味しそうじゃないの。ちゃんと美味しいのよ」

男「卵がけご飯の入門編みたいなレシピだもんね。醤油の量さえ間違えなければ誰でも作れるし」

女「そういうこと言う? あげないよ?」

男「ごめんなさい。ひと口だけでもいいのでください」

女「やはり人間は素直で奢らず謙虚で慎ましくあるべきだね。ひと口だけあげましょう」

男「ありがとうございます」

女「はい、あーん」

男「……自分で食べるよ?」

女「誰も見てないから。はい、あーん」

男「いや、でもなんか気恥ずかしいし」

女「あーん」

男「……あーん。はむ……もぐもぐ」

女「ねー、美味しいねー」

男「……お腹いっぱいです」

女「うそ。一口で?」

男「雰囲気で満たされました」

女「雰囲気?」

男「俺だけが知ることだから、おんなは美味しい卵がけご飯を食べな」

女「なんだか上から目線。いいけどね。……もぐもぐ」

男「でもその卵がけご飯、なんだか見た目が地味だよね」

女「もぐもぐ。茶色い鰹節に黒いごま昆布、ご飯は黄色くても上にあるのがね、どうしても」

男「ご飯、足りないよね。シャケ焼いてるのに食べちゃうなんて」

女「……炊く」

男「これから準備すると1時間半以上かかるよ」

女「チンする」

男「冷蔵庫にあるご飯はそのお茶碗1膳分で終わり」

女「だけどですが、チンして炊けるご飯が戸棚の中にあったのです」

男「なんと目ざとい」

女「そろそろおシャケをひっくり返す時間です。でした」

男「あっ、ちょっとだけ焦げの臭いが! やばっ!」

女「焦げた部分は包丁で削り落とせばいいだけだから大丈夫」

男「両面焼いてからガリガリするね。はい、ひっくり返しました」

女「はい。食べ終わりました」

男「……このシャケは誰のために焼いてるんだっけ?」

女「2人分です。でした」

男「でした、か。夜間に押し寄せる食欲はなんと強い」

女「4人分のおシャケです」

男「そっち? 1人分じゃなくて4人分?」

女「私とおとことお義父さまとお義母さまで4人分でございます」

男「この切り身を4人で分けると熾烈な争いにならない?」

女「思うでしょ。思うよね。それは焼けてからのお楽しみ」

男「ご飯はいつチンするの?」

女「今からチンするの」

男「ひとつでいいよね。おんなはもう既に1膳食べちゃってるし」

女「おとこならひとつ丸っと食べられるでしょ?」

男「夜だもの。炭水化物は抑えめに」

女「私だけ太るんだ……そうやって私だけが太っていくんだ……」

男「おんなに合わせて俺が太る必要ってあるの?」

女「知らないからね! おとこの気付かない間に私は太っていくんだからね!」

男「すごい。まったく心に響かないのになんだか不思議と怖い」

女「夜にお腹が空く私の足は、気付けばこのダイコンの胴回りみたいにずっしりと」

男「知ってた? 素直に睡眠を取るだけで解決するんだよ?」

女「呼吸をするだけこのニンジンのように顔が赤くなり」

男「あと間食もね。大好きだけどやめようね」

女「でもくびれだけはこのキュウリみたいにきゅっと細く」

男「それは都合が良す……ダイコン足にキュウリのくびれってバランス悪くない?」

女「おとこさんおとこさん。おろし金をくださいな」

男「おろし金は一番上の引き出しに入ってるよ。ダイコンをおろすの?」

女「ピンぶー」

男「ピンぶー?」

女「3分の1だけ正解したときの効果音。ピンぶー」

男「3分の1くらいならもういっそ不正解でいいです」

女「キュウリとニンジンもすり下ろします」

男「そいつらも?」

女「この子たちもすり下ろすことで彩りが鮮やかになりまして」

男「あまり見ないけどおいしいの?」

女「おいしそうに思えないんだ。あー、そっか。男はまだ食べたことないんだ」

男「ないねえ。味と食感がちゃんとマッチするかがすんごい不安」

女「決めつけはダメだよ。案外美味しいかもしれないんだから」

男「美味しいかもしれないのか。……かもしれないの?」

女「私も食べたことないんだなあ。それが、意外と」

男「ないんだ。まるで経験者の口ぶりだったのにないんだ」

女「すられたダイコンはいつみても綺麗だよね。見た目がみぞれみたいで冷ややかで」

男「クールビューティだよね。なんか分かる」

女「別の空き皿に移して、おろし金の受け皿をお水でさっと洗い流します」

男「べつにダイコンの味が混ざったところで」

女「その油断で取り返しがつかなくなるんです。はい、お次。ニンジンさんをごりごり」

男「ニンジンって包丁で切るときもけっこう硬いからなあ。食感が想像できない」

女「そう思うでしょ。でもね、削られていく彼女を見ててごらん」

男「彼女なんだ。女の子なんだ」

女「っぽくない?」

男「でもなんとなく分かる。確実に色合いのせいだけど」

女「いくよ」

男「いいよ」

女「せーのっ」

男「……」

女「ぐわー! 体が削れていくー!」ガリガリガリ

男「ひぃっ?! いきなりなに?!」

女「色からしてグロテスクに見えるかなって」

男「これから口に入る食材でなんてことをするんだい」

女「ニンジンはダイコンほど太くないから多めに使います」

男「なるほどね」

女「でも白に対しては強気に主張する色なので少なめで調整します」

男「どっち?」

女「適量です」

男「そんな保身に回った適量の使い方があっただろうか」

女「すりおろしたらこの子別の小皿に入れます」

男「いちいち新しい皿を使うのはもったいなくない?」

女「いいの。それが料理なの。最後の出番のキュウリさん。少なめでいきます」

男「でも多めでしょ?」

女「白に浮かぶ赤を際立たせるためアクセント。あと少しだけ香りづけのために」

男「本当に少なめでいいんだ」

女「これだけ。5分の1もすらなくていいくらい」

男「へえ。すくない」

女「ぐわーっ。からだが削れていくー」

男「色、色が悪い。完全に地球外生命体の体液になってる」

女「こうして地球は守られたのでした。ちゃんちゃん」

男「いくら相手が侵略者だからって制裁がスプラッタすぎない?」

女「そろそろシャケは焼けたました?」

男「んーとね。焼けてるね。取り出すよ」

女「忘れずにがりがりしてね」

男「がりがり了解」

女「チンで炊けたご飯を盛る前に、卵がけご飯で使ったお茶碗を洗います」

男「乾いた卵ってどうしてあんなにこびりつくんだろうね。執念だよね」

女「そこまで乾かした経験はないです」

男「そうですね。次回からはちゃんとすぐに洗います」

女「がりがり終わった?」

男「焦げは落としたよ」

女「そしたら切り身をほぐして。ぽろぽろにバラバラに」

男「なるほどね。それが切り身を4人で分け合う方法ね」

女「たしかジャムが入ってた空き瓶を残しておくお義母さまだったよね」

男「そうね。便利だからって言っていつも保管してるね」

女「必要ない分はそれに入れて冷蔵保存しておきます」

男「母さんからすればシャケのほぐし身が冷蔵庫に突然現れたように見えるんだろうな」

女「冷蔵庫を開けたついでに卵をひとつ取ってくださいな」

男「……また卵? カロリーが凄いよ」

女「また半分ずつにしよ?」

男「さっきは俺がひと口だけです。詐称するんじゃありません。はい、どうぞ」

女「ありがと。だって美味しいんだもん。まろやかで」

男「美味しいのは否定しないけどさ。ほどほどにね」

女「今日だけの贅沢です。明日からは節制を誓います」

男「3日続いたらご褒美にポテチをあげよう」

女「……頑張る」

男「頑張っちゃうんだ。ポテチの為の努力は完全に本末転倒でしかないけど」

女「卵をわるんだけどね、ちょっとだけセレブっちなことしてもいい?」

男「セレブっち?」

女「白身を捨てます」

男「とんでもないことを言い出した。すんごいもったいないから却下」

女「じゃあ白身だけフライパンで焼きます。違う。チンします」

男「白身もチン?」

女「細身のスレンダーなコップってある?」

男「あるよ」

女「ちょっと待ってね。半分に割った卵の殻で黄身のお手玉をしないと」

男「食べ物であそんではいけません」

女「違います。殻のぎざぎざで白身を切り離してるだけです」

男「ごめんなさい」

女「はい。白身だけが綺麗に落ちました。どう? ぷるぷるの黄身」

男「黄身だけになっただけなのに倍くらいは美味しそうに見える」

女「白身をコップに移して15秒。チンして」

男「たった15秒?」

女「それで十分に固まるの。ぷるぷるに」

男「ぷるぷるの状態は固まっていると言えるの?」

女「はい注目! おんな先生に注目!」

男「はい、先生。白身をどうぞ」

女「ありがとうございます。でもこれは脇に置いちゃいます」

男「使うためにチンしたんじゃないの?」

女「だって元々はそんな予定なかったんだもん」

男「そうね。じゃあ細かく切って朝食のサラダに混ぜようかな」

女「ここに野菜3種のすりおろしと黄身とご飯とほぐし身のシャケがあります」

男「もう美味しそう。並んだ材料を眺めるだけでご飯が進みそう」

女「まず最初にお茶碗にご飯を盛りまして……さあ、どうするでしょうか?」

男「そこに黄身を置きまして」

女「ハズレ。ここで納豆を冷蔵庫から取り出します」

男「ずるくない? 選択肢になかった納豆が急に出てくるってずるくない?」

女「醤油もタレも足しません。ほぐすために数回混ぜたらお米に乗せます。どちゃっ」

男「擬音」

女「納豆をドーナッツ状に乗せたら、その穴に黄身を置きます。べたっ」

男「もうちょっと擬音に気を遣おうか。俺たちが食べる物だよ」

女「シャケのほぐし身をまんべんなく全体にぽろぽろ……」

男「これは卵がけご飯? 納豆ご飯?」

女「卵がけ納豆ご飯。種族の壁を取り払った融和と平穏を象徴する料理になります」

男「いいね。おいしそう。見た目で既においしそう」

女「これに納豆のタレをかけたら?」

男「かけたら?」

女「かけたら?」

男「かけたら?」

女「……かけないの?」

男「そっち? 『どうしてかけないの?』的な疑問だったの?」

女「かけて」

男「かけます。タレの袋を破きまして……ダシが詰まってそうな色してるよね」

女「そうだよね。ほんのり甘いよね。味も匂いも」

男「そういえば卵と納豆と米でしょ。納豆のタレだけで味は足りるの?」

女「それはそうとして、混ぜて」

男「え? 薄味だよ?」

女「まーぜーるーのー。大丈夫」

男「失礼いたします。そい」

女「たくさん乗せたからもちゃもちゃ鳴ってる」

男「擬音擬音。聞こえたままを口にされると食欲失せるよ」

女「混ざった?」

男「卵がけご飯に納豆が混ざり込んでる光景……これは人を選びそうだ」

女「おいしいのに?」

男「美味しさと見てくれの良さはまた別の話しだし。俺は気にしないけど」

女「だけどシャケだって混ざってるよ」

男「その『だけど』でいったいどれだけの人が『じゃあ仕方ないか』って答えるとお思いで」

女「私」

男「うん、そうね。発案者だもんね。生みの親に否定されたらただのダークマターだもんね」

女「べっつにー好きな人だけ食べればいいですしー」

男「ねえ。大根おろしたちの出番はいつ?」

女「お茶碗の真ん中でも端っこでも好きな場所に乗せるだけ。そしたら完成」

男「色の組み合わせがどうとか言ってたけど……こんなもんでいい?」

女「完成嘘でした。おろしに醤油をちょっとだけかけて」

男「そうだよね。このまま出来上がったら勝手に醤油を好き放題かけてました」

女「お好みでごま昆布とか、マーガリンとか」

男「マーガリンを乗せるのはちょっと……」

女「そうそう。マーガリンを乗せるならちょっとだけで」

男「違います。今のちょっとは分量ではなくて、味が狂うんじゃないかっていう心配と抵抗です」

女「……お好みだもの」

男「え? そんな悲しげな顔をするほどだった?」

女「……えい」

男「あ、乗せた。後悔しても知らないよ?」

女「意地でも美味しいって言うもん……あむ」

男「……」

女「もぐもぐもぐ……あむ」

男「……どう?」

女「んー……あむ」

男「あれ? 美味しいって言わないの?」

女「もぐもぐもぐ……ごくん。……んふふ」

男「なにその幸せそうな笑み。ちょっとだけちょうだい」

女「えい」

男「うわっ。マーガリン乗っけた」

女「これを食べたら分かるよ」

男「……いやぁ……だってダイコンおろしに納豆に卵にマーガリンって……いやぁ……」

女「あむ」

男「あっ」

女「もぐもぐもぐ……ごくん。あーあ、残念だなあ、美味しいごはんを一緒に食べられないだなんて」

男「うぐっ」

女「……ざんねんだなあ」

男「……食べます」

女「言ったね。言ったね、聞いたからね。はい、あーん」

男「あ、あーん……あむ」

女「噛んで噛んでよく噛んで」

男「案外……おいしい?」

女「おろしを食べるとちょっとだけすっきりするよ。はい、あーん」

男「そうね。あーん。もぐもぐ。うまい」

女「ね、ね? ねね? そうでしょ」

男「んー、でもこれ。マーガリンは好き嫌いあると思うよ?」

女「私は好きだからいいんです。マーガリンが」

男「もうひとくちもらってもいい?」

女「最後のひとくちしかないのに?」

男「そう言われると気が引ける……おんなは食べたい?」

女「おとこが食べていいよ。私の方が多く食べちゃってるし」

男「ありがとうございます。ではフィナーレをいただきます。あむ」

女「でもさあ、今思ったんだけどね」

男「もぐもぐ、んん?」

女「料理っていうほどの料理じゃないよね。あまり料理感がないよね」

男「もぐもぐもぐ……ごくん。いいんじゃない。軽食のつもりで作ったんだし」

女「言いたくないけど、カップラーメンの方が早くておいしいと思うなあ」

男「お湯を入れて3分待機と比べたらそりゃ勝てないよ。無理だよ」

女「無駄という無駄を省いた洗練された3分は強いなあ……はぁ」

男「俺はこれ食べてもカップラーメンとは比べる気にはならないけどね」

女「なんで?」

男「だってこれはこれで美味しかったし」

女「はー、優しいなあ。優しい彼氏を持って嬉しいですね。うりうり」

男「なぜ脇腹を突つきますか」

女「よし。もっと本読む。もっともっと本を読んでレパートリー増やす!」

男「頭でっかちだなぁ」

女「ばかちんがあ。ぺんは剣よりも強し! 偉い人が言ってた」

男「俺はもっと良い方法を知ってるけどね。女が出来るかどうかは別問題として」

女「簡単?」

男「簡単ではないかもしれないけど楽しいと思うよ。実際に楽しそうだったし」

女「あー、分かった! それって、あれでしょ! ポテチ探」

男「料理をしよう」

女「ばっちこい」
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